続 渡慶次の歩み
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編集後記

 
 「記憶より記録」月並みの言葉ですが、今回の字誌編集作業を通して、その持つ意味の重さを身にしみて感じました。一つの歴史的事項について確かめるべく古老や先輩を尋ねましたが、時代とともに記憶は薄れていくものだと痛感いたしました。しかし、そのハンディを補うべく我が渡慶次区には多くの刊行物が残っています。
 老人会、婦人会の周年事業における記念誌、土地改良事業完工記念誌、運動広場及び集落センター竣工記念誌、スポーツ史概論、山芋づくり同好会やウラシマソフトボール愛好会の記念誌等、最近にいたっては農村基盤総合整備事業の記念誌等いずれも価値ある記録であり、今回の編集にあたり貴重な資料として活用いたしました。
 さらに倉庫に残されていた古い資料を数日かけて編集委員で目を通し、貴重な資料も発見され本誌の一部に加えてあります。なおこの資料は将来にわたり残すべきものと判断したものについてはファイリングし、整理棚に並べ区民の活用に供すべく保存してあります。
 このように記録のもつ意義は極めて大きいものがあります。
 今回の『続渡慶次の歩み』の編集委員会を立ち上げて6年の歳月が流れました。編集委員の努力奮闘は筆舌に尽くしがたいものがありました。中でも事務局長の小橋川※※は公務の重責を担いながらも、その卓越した編集能力を傾注して下さいました。また嘱託職員の福地※※も編集委員会の開催のために随時、課題の整理や次回の作業の準備等、微に入り細に入り万全の態勢でがんばってくれました。
 毎月発行された「渡慶次字誌編集だより」は編集経過を広く区民に知らせるとともに、区民との架け橋となり資料や写真の提供等に多大な役割を果たしました。
 戦後高志保の仮設住宅にあっても渡慶次区の先人先達のむらづくりに対する情熱は今日でも時に触れ語り継がれておりますが、改めてその心意気を再認識することができました。衣食住にも事欠く時代にあっても「興隆会」と銘打って村(ムラ)への復帰に備え、「戦後の復興は道路の整備から」を合言葉に、けん縄で測量を行いました。今日の渡慶次集落の住環境、行き届いた道路の整備状況を見るにつけ、先人達の偉大さに対し敬意と感謝の念を禁じ得ません。
 さて、今回発刊されます『続渡慶次の歩み』には次のような特徴があると思います。
 第一に多くの区民が参加したことです。聞き取り形式ではありましたが、編集委員独自で実施したもの、いぶし銀会役員で実施したもの、沖縄国際大学夏季セミナーで実施したもの、琉球弧を記録する会で実施したもの等、方言も加え多くの区民の声や思いを掲載することができました。
 第二に最大限個人情報には留意したことです。当初計画では門中の章は家系図まで加える予定でしたが、プライバシー保護の観点から軌道修正いたしました。
 第三に時代表記は西暦を先にし元号は括弧に入れ、人物に関しては敬称を略しました。
 第四に横書きにしたことです。図表や統計等、算用数字が多く使用されるため表記の利便性に立脚したからです。
 第五に行政日誌を割愛し、行政の歩みは歴史年表にまとめました。なお渡慶次の行政の歩みと読谷村及び沖縄県等の重要な歴史上の事項も対照的に表記してあります。
 第六にDVDに映像資料を収録したことです。紙面には残すことのできない演劇や舞踊、本誌掲載の写真等を映像として保存し、家庭のDVDプレイヤーで見られるようにしました。また、本誌の内容をCD-Rとインターネットで検索できるように工夫しました。CD-Rには今後の活用のため、本誌に掲載できなかった資料も収録してあります。
 第七に写真を多く取り入れて親しみを持たせ、理解度を深めたり、裏話や興味ある部分をコラムにしたことです。
 以上の7点が特徴ではないかと思います。数年前、南部へ産業視察に行った際に1971年(昭和46)に発刊された『渡慶次の歩み』が骨董品店に展示してあるのを発見いたしました。古書として販売しているかどうかの確認は出来ませんでしたが、貴重な資料として取り扱われていることは間違いありません。今回の『続渡慶次の歩み』もそれがあったからこそできたと思います。
 多くの区民の御指導と激励を仰ぎ、資料や写真の提供等がございました。心より感謝申し上げます。特に文化財保存委員の新垣※※、与那覇※※、嘉数※※には伝統芸能分野で多大な骨折りをいただきました。
 『渡慶次の歩み』の編集後記の最後の一文に次のようなことが記されています。
 「さらに今後何年かの後には優れた陣容によってもっと価値ある渡慶次誌ができることを望んでいる」優れた陣容かどうかは別として、先人たちの思いを汲み取り刊行することができた成就感、達成感は少なからずあります。DVDやインターネットで検索できるような時代に即応した工夫も凝らしてあります。渡慶次の一時代を知る手助けになれば幸いでございます。多謝
 
編集委員長 山城幸雄
 
 

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