続 渡慶次の歩み > 第11章 渡慶次の芸能と年中祭祀 > 第2節 歌劇「悪魔狂」の解説と脚本
第11章 渡慶次の芸能と年中祭祀
第2節 歌劇「悪魔狂」の解説と脚本
解説
この劇が最初に上演されたのは1933年(昭和8)頃であった。当時、渡慶次に恩河※※という人が住んでいて(現字渡慶次)、彼が悪魔狂(アクマクリー)の脚本を作り上演させたと言われている。恩河※※は地方まわりの旅芸人で、渡慶次に移り住んでから舞踊・寸劇等を多く作り、今日まで彼が残した数々の舞踊等は後輩たちによって受け継がれ演じられている。
渡慶次は明治の頃から村芝居が盛んで、芝居を通して他字との交流が行われていたと先輩方から聞かされている。現在でも、獅子舞・組踊・演劇等が数多く継承されている。
この演劇「悪魔狂(別名継母狂言(ママウヤチョウギン))」が戦後初めて上演されたのは、1948年(昭和23)であった。混沌とした社会状況の中で青年達(ニイセーター)が部落復興のための志気を高めようとの主旨で上演されたものであった。その後、長い間演じられることがなく、脚本も無くなっていた。
ところが、1992年(平成4)の第8回渡慶次まつりを機に、昔からの村芝居を復活させようとの声が上がり「八重山節(エーマブシ)」を復活し、翌年には「悪魔狂」を復活させた。1948年(昭和23)の上演から実に45年ぶりの再演であった。その際の脚本は、かねてより与那覇※※が中心となって先輩達から聞き取り調査を行い、作成してあったものを使った。役者も初舞台だったためとても苦労したが、厳しい稽古の甲斐あって好評を博した。その後読谷村主催の「城フェスティバル」や村婦人会主催の「演芸の集い」など、村内でのイベントにも出演した。
渡慶次は明治の頃から村芝居が盛んで、芝居を通して他字との交流が行われていたと先輩方から聞かされている。現在でも、獅子舞・組踊・演劇等が数多く継承されている。
この演劇「悪魔狂(別名継母狂言(ママウヤチョウギン))」が戦後初めて上演されたのは、1948年(昭和23)であった。混沌とした社会状況の中で青年達(ニイセーター)が部落復興のための志気を高めようとの主旨で上演されたものであった。その後、長い間演じられることがなく、脚本も無くなっていた。
ところが、1992年(平成4)の第8回渡慶次まつりを機に、昔からの村芝居を復活させようとの声が上がり「八重山節(エーマブシ)」を復活し、翌年には「悪魔狂」を復活させた。1948年(昭和23)の上演から実に45年ぶりの再演であった。その際の脚本は、かねてより与那覇※※が中心となって先輩達から聞き取り調査を行い、作成してあったものを使った。役者も初舞台だったためとても苦労したが、厳しい稽古の甲斐あって好評を博した。その後読谷村主催の「城フェスティバル」や村婦人会主催の「演芸の集い」など、村内でのイベントにも出演した。
あらすじ
この物語は、複雑な家庭環境を持つ姉弟とその継母(ままはは)と父親の4人の生活を描く。姉弟は先妻の子どもであるため継母の悪巧みに苦労させられる。父親は妻が後妻のため、2人の子どもに悪業をしないかといつも気づかっている。
父親が国頭へ用事に出掛けることになるが、出発を前に妻が2人の子どもに悪巧みをしないかと心配しながら子ども達の事を頼んだ。
しかし、継母は夫の留守を良機とみるや2人の子どもをいじめるため悪巧みを企(くわだ)てる。特に姉のチル小をいじめ、雪の降る寒い日にチル小が着ている着物をはぎ取り家から追い出すのである。
チル小は頼る人もなく、行くところもなく、とうとう実母の墓の前で「育てもしないのにどうして私を生んだの」と泣きくずれる。実母の霊は墓中から「夏の雨風も、冬の霜も雨霜と思うな。戻って戻られない死後(グソー)の道であり、私が継母に戒めるから心配しないで。」と家へ帰るようさとすのである。
弟松小は姉、チル小が継母に家から追い出されたのを知り、継母の目をぬすみ着物を持って姉チル小を探しに方々(ほうぼう)を歩きまわり、その途中実母の墓の前に泣きくずれている姉チル小を見つけ、持ってきた着物を着せ家へ帰ろうとさとす。しかしチル小は継母にしいたげられた苦しさ、つらさを考えたときに継母の元へ帰る気がせず、弟松小には帰って親孝行するよう言い、帰ろうとしない。弟松小はこれを聞きいれず、2人共亡き母の墓の前で泣きくずれてしまう。
父親が用事をすませて国頭から帰る途中姉弟2人が墓の前に泣きくずれているのをみつける。そしてそれが継母のしわざであることを知り、もう心配することはないとなぐさめ、3人で家へ帰ろうとしているところへ神人ハーメーが通りかかる。父親から家庭の事情を聞いた神人はそこで祈とうをし、家庭が円満になるよう祈ると、その願いが叶えられ、継母は気が狂い踊り出す場面で幕となる。
父親が国頭へ用事に出掛けることになるが、出発を前に妻が2人の子どもに悪巧みをしないかと心配しながら子ども達の事を頼んだ。
しかし、継母は夫の留守を良機とみるや2人の子どもをいじめるため悪巧みを企(くわだ)てる。特に姉のチル小をいじめ、雪の降る寒い日にチル小が着ている着物をはぎ取り家から追い出すのである。
チル小は頼る人もなく、行くところもなく、とうとう実母の墓の前で「育てもしないのにどうして私を生んだの」と泣きくずれる。実母の霊は墓中から「夏の雨風も、冬の霜も雨霜と思うな。戻って戻られない死後(グソー)の道であり、私が継母に戒めるから心配しないで。」と家へ帰るようさとすのである。
弟松小は姉、チル小が継母に家から追い出されたのを知り、継母の目をぬすみ着物を持って姉チル小を探しに方々(ほうぼう)を歩きまわり、その途中実母の墓の前に泣きくずれている姉チル小を見つけ、持ってきた着物を着せ家へ帰ろうとさとす。しかしチル小は継母にしいたげられた苦しさ、つらさを考えたときに継母の元へ帰る気がせず、弟松小には帰って親孝行するよう言い、帰ろうとしない。弟松小はこれを聞きいれず、2人共亡き母の墓の前で泣きくずれてしまう。
父親が用事をすませて国頭から帰る途中姉弟2人が墓の前に泣きくずれているのをみつける。そしてそれが継母のしわざであることを知り、もう心配することはないとなぐさめ、3人で家へ帰ろうとしているところへ神人ハーメーが通りかかる。父親から家庭の事情を聞いた神人はそこで祈とうをし、家庭が円満になるよう祈ると、その願いが叶えられ、継母は気が狂い踊り出す場面で幕となる。
登場人物
父親 チル小 松小 継母
亡母親 神人
第1幕 家の場面
〔かりき節 前奏〕
〈父親上手より出る〉
父親
うちんうかりらん 国頭(クンジャン)に行ちゅん やしが男子一人(イキガングヮヒチュイ)やしが、むしや先妻(サチトゥジ)去(ンジャ)る若夏(ワカナチ)
〔間奏〕
此(ク)の世(ユ)振り捨(シ)てて産子(ナシグヮ)二人(タイ)なぎて
無情(ムジョ)の世(ユ)の中 渡て我(ワ)ん一人(ヒトゥイ)あわりしみて
男一人(イキガチュイ)しや育(スダ)てぬならん
〔間奏〕
又と妻(トゥジ)とめて親子(ウヤックヮ)にしみて 継子(ママクヮ)、継母(ママウヤ)や ゆすどやゆる
あさましや 細々(クマグマ) とじきて行ちゅん
*とじきて:言いつけて
〔間奏〕
〈上手に向かって〉
父親
内に居る三人(ミチャイ)急じ此(ク)まに出(ンジ)てく「へい」
〈上手から継母、チル小、松小出る〉
継母
ぬーがやいびら
父親
貴女(イヤー)に言やねーならん事ぬあてる
継母
ぬーぬ用事(ユーズ)ぬ あてが やみせら
父親
うちんうかりらん 国頭に行ちゅん 戻て来(チュー)る間(エダ)や 親子3人(ウヤクミチャイ) 睦(ムチ)ましくに 可愛(カナ)さしち くり
継母
例い此ぬ二人(タイ)や 継子(ママクヮ)ゆやてん実産子(ジチナシグヮ) ゆかね 可愛(カナ)さ しゃびん
いひぃんすっとん にんじけ みしょんな
〈間奏で継母上手幕内に入る〉
松小
今日やいめんそうち 又何時(イチ)やいーめが
父親
十日(トゥカ) 二十日(ハチカ)内に 戻って来(チュウ)ぐと 継母(アヤー)御側(ウスバ)や 離りて しまんさ
〔間奏〕
チル小
あわり此ぬ二人(タイ)や 親に捨てらりて いえたい父親(ターリー) 継母(ママウヤ)ぬひでや かにんあぐと 用事(ユーズ)しまさは 早(ヘー)くめんそうりよ
父親
今日(チュウ)や行(ン)じ 明日(アチャ)や戻て来(チュー)ぐと継母(アヤ)御側(ウスバ)や 離りてしまんさ
〈父親家を出て下手幕内に入る〉
〈チル小、松小2人上手幕内に入る〉
第2幕 家の場面
〔チクタルメ節〕前奏1回
継母
我んど此ぬ家庭(チネ)ぬ 後妻(アトドゥミ)ぬ女(イナグ)やいびしが 此まに来(チ)っから楽やしち居(ウ)しが 先妻(サチトゥジ)や産子(ナシグヮ) 女子(ウナイ) 男子(イキイ) 産(ナチェ)る事やしが 良(イ)い時(バス) 夫(イキガ)ん留守に なて居(ウ)ぐと 今(ウ)の時(バス) 計て殺(クル)ち捨てら 内に居座(イシ)かとるあぬ女(イナグ) 急(イス)じ出(ンジ)てくー
〈上手幕内より次の台詞を唄いながら出る〉
チル小
ぬがたり継母(アヤ) 何(ヌー)がやいびら
継母
何(ヌー)がやらんで 貴方(ィヤー)にや しいくゎいみ
チル小
今(ナマ)ど我んね 布や 切(チ)やびたる
継母
誰(ター)がうぬよーな 仕事(シクチ)いいちきたが 此(ンマ)に居座(イシ)かとて 親(ウヤ)ぬ腹立てらゆい やかね 此(ク)の糸ん 急(イス)ぎ掛き満ちり 油断(ユダ)のさんぐと 急(イス)ぎ掛き満ちり
〈継母糸掛をチル小に渡し上手幕内に入る〉
〈チル小糸掛を持って次の台詞を歌う〉
〔道の島節〕
チル小
しばし母親(ハハウヤ)に 捨(シ)てられて我身(ワミ)や 又 母親(ハハウヤ)ゆとめて 母親(ハハ)ぬ言葉(クトゥバ)
〔間奏〕
しむちしむからん かねる 雪降(ユチフ)いに糸掛きる手荒(ティラ)い 急(イスジ)ぎ掛き満ちら
〔間奏〕
掛きてくぬ 糸(カシ)や足らんあやびむん片時(カタトゥチ)や母ぬ御側(ウスバ)ゆらな
〈上手より継母出ながら〉
〔クムイ節〕早口
継母
とじきてる仕事 すそにしち うちょて 朝夕(アサユ)我が肝(チム) ひー焼(ヤカ)すやから
チル小
掛きて此ぬ糸や 足らんあやびむぬ 親(ウヤ)と子(クヮ)ぬ中や 繰り返(ケー)し返(ゲー)し ゆしてたぼり
(早口)
継母
雪(ユチ)や降いまさて 松(マチ)ぬ下雪(シタユチ)や 押(ウ)し払い払い 払て置(ウ)きよ
油断のさんぐと うり くり持(ム)っち行き
〈継母がチル小にホーキを投げつける〉
〈チル小唄いながら舞台を掃く〉
〔道の島節〕前奏1回
''チル小'
雪(ユチ)や降(フ)いまさてよ 松(マチ)ぬ下雪(シタユチ)や 払て払りらん 暫(シバ)し母親(ハハウヤ)の御側(ウスバ)ゆらな
〔間奏〕〈少々早めに〉
〈継母上手より出る(少し早足)〉
継母
此処(クマ)うとて聞(チ)ちゃん さかしゆむ童(ワラビ) 朝夕(アサユ)我が肝(チム)ゆ 焼すやから
〔間奏〕1回
継母
行く先ぬあらば 母捜(トゥメ)て行きよ
〔間奏〕
継母
我(ワン)がど 着(クィ)してある 着物(チン) はじ取やい
此ぬままに出じて 行ちしみり 以後(クリ)から家庭(チネー)の あんとむな
チル小
女(イナグ)あてなしぬ 赤裸(アカハダカ)なゆみ
頼(タン)り親(ウヤ)がなし
頼(タン)り親(ウヤ)がなし 着物(チン)ぬん着(クィ)してたぼり 頼(タン)り親(ウヤ)がなし
継母
畜生者(チキショウムン)に着(クィ)して 腹(ハラ)ゆ立たゆいか 此のままに しんじゃんくんじゃん破(ヤイ)しがまし 以後(クリ)から家庭(チネー)の あんとむな
〈松小上手幕内より掛け足で出て継母にすがる〉
〔口説〕
松小
さりさり継母(アヤー)さり しばし待ちみしより
願事(ニゲイグトゥ)ぬあやびむぬ 待ちみしょり 頼(タン)り願事(ニゲイグトゥ) 聞(チ)ちたぼり
いかな継子(ママクヮ)と継母(ママハハ)ぬ 仲ゆやてん うりだきに悪(アク)や しみそうらんてん ゆたさやねーやびらに
例(タトゥ)い此ぬ二人(フタイ) 打ち果たち さりてん くがりてん 死じゃんてい
むしか此(ク)ぬ事(クトゥ) 世間(シケ)に表りらは うんじゅ一所(チュトゥクル)の 御顔(ウカウ)やあやびらん
あたらし父親(ターリー)御顔(ウカウ)にかかて いちゃびしが
継母
ぬんり言がひゃ 童(ワラビ) 何(ヌー)たる者(ムン)のちゃ 生れて見(ン)ちゃる
死じぇ見(ン)だに
チル小
あきさみよ いえたり継母(アヤー) 我ん殺(クル)しみしょり あて産子(ナシグヮ)ぬことや 許ちくみしょり
松小
暫(シバ)し いえたい姉(ンミー) 待ちょてくみしょり
姉弟(チョウデー)や まーからまーまで 一緒(ママ)どやいびーる
〔間奏〕
松小
男(イキガ)生まりとて 歳ぬ十二、三 いかな太刀(カタナバ)ん ぬんり恐(ウス)りゆが 親のど しみせびーぐと ゆたさどあいびいる うりさり 我んから一番殺(クル)ちくみしょり
継母
親(ウヤ)の言(イイ)し聞(チ)かんゆいからど 我身(ワミ)ん戒(イマシミ) あてゆぐと
いやーや内んじ 食物(ムン)ゆちり喰え いやーや以後(クリ)から 家庭(チネー)に 足(ヒサ) 入りらわど
〈継母上手幕に入る〉
〈チル小正面向って〉
(連つらね)
チル小
継母(アヤー)ぬ気持(チムチ)に逆(サカラー)て 出(ン)じて行ちゃびむの あて産子(ナシグヮ)童(ワラビ)
怪我ん ねんぐとに
手取(ティトゥ)て引合(ヒチアーチ)たぼり
南無阿弥陀仏(ナンマイダーブトゥキ)
第3幕 道行き 墓の場面
〔子持節〕
なくがなし泣ちん 聞く人や居らぬ
共に泣くものや 山のひびき
〔道の島節〕
チル小
育てらん親(ウヤ)ぬ 何故(ヌユ)で我ん産(ナ)ちゃが 朝夕墓通(カユ)て 泣ちどぅ暮らす
「母親(アヤー)たい」
〈チル小墓にもたれ泣く〉
〔アーキー〕
あーきー 夢がやゆら
〔仲順流れ節〕
亡母親
ぬーが産子(ナシグヮ)よ くまに来(チャ)が 朝夕墓通(カユ)て 泣ち明かす
アケズの飛(トゥ)ばわん 実母(ファファ)と思(ウム)り ハビルの飛(トゥ)ばわん 実母(ファファ)と思(ウム)り
夏(ナチ)ぬよ 雨風(アミカジ)ん雨(アミ)と思(ウム)な 冬ぬよ 霜(シム)かきん霜(シム)と思(ウム)な
戻(ムドゥ)て戻ららん 死後(グソー)の道 朝夕実母(ファファ)が 涙(ナダ)と思(ウム)り
節々(シチビチ)ぬ祭事(マチリグトゥ) 遅(ウク)りるな うりど死後(グソー)の 孝行なゆさ
我身(ワン)が継母(ママウヤ)や 戒(イマシ)みーん 此処(クマ)から宿に 立ち戻(ムドゥ)り
〔親ぬ心節〕前奏
〈松小下手より着物を持って姉捜しに出る〉
松小
継母(ファファ)の気持(チム)ちに逆(サカ)て 姉(ンミー)や追(ウー)いゆ出(ン)じゃさりて 追(ウー)いゆ放さりて
腹一つ(ティーチ)ぬ姉弟(チョーデー) 捨(シ)てて捨(シ)てらりみ かねる雪(ユチ)降いに 着(チ)る着物(チン)や はがり
継母(ファファ)ぬ目(ミ)ゆ隠り 此の着物(チン)や持ちゃい 姉(ンミ)が後とめて 見らんてん我身や
物忍(ムヌシヌ)び忍(シヌ)で 今(ナマ)ど我身(ワン)ね出じ立つど
あきよ姉(ンミ)よ 起(ウキ)てくり姉(ンミ)語る事あむぬ
でかさり姉(ンミ) 戻(ムドゥ)やびら いえ姉(ンミ)
チル小
あきよあて弟子(イキイ)や 我身(ワン)ぬ事と思(ウム)て 此処(クマ)迄来(チャ)んな 玉黄金(タマクガニ) 玉黄金(タマクガニ)
松小
姉(ンミ)やちょん雪(ユチ)に ちみらりて後ど 匂(ニウ)いやまさゆる浮世(ウチユ)さみ いえ姉(ンミ)
チル小
苦(クリ)さ思(ウ)み忘(ワシ)て 行かんていすりば 今(ナマ)いめる継母(ハハ)に 孝行や又ならん
急(イス)ぎ立ち戻(ムドゥ)て 今(ナマ)いめる継母(ハハ)に 孝行念(ニン)入り 玉黄金(タマクガニ) 玉黄金(タマクガニ)
松小
姉(ンミ)や我んゆかね 歳や 上(イー)ゆやりば 実母(ファファ)ぬ面影(ウムカジ)ん 拝(ウガ)みなりすみて
我んね懐(フチクル)に 抱かりて居(ウ)る時(バス)離りやびて 別りやびて
別りやびて実母(ファファ)と夢(ユミ)うちち心(グクル)あきよ姉(ンミ)よ 我んね ちゃすがや
りかさり早(ヒェ)くな 戻(ムドゥ)やびら いえ姉(ンミ)
チル小
あきよ あて弟子(イキイ)や しかさわん聞(チ)かん むむしがい しがて 離せーならん
〈2人墓前に座っている〉
〈父親は国頭での用事を終えて帰る 下手より出る〉
〔赤田首里殿内節〕
父親
用事(ユーズ)ん済まちゃい 立ち戻(ムドゥ)ら家庭(チネ)や妻子(トゥジックヮ) 待ちかんてそうらどーんで思(ウ)みば
目(ミー)ぬ前(メー)に立ちまさて 座(イ)ちん立ちん うらりらん 早(ヒェ)くなーなー くま戻(ムドゥ)ら
〔間奏〕
父親
今日(チュー)や何(ヌー)がやゆら 産子(ナシグヮ)面影(ウムカジ)立ちまさて目(ミー)ぬ前(メー)にさがとて 暮さらん
歩りん 歩まらん クルマトーバルなて行ちゅん
〈間を置く〉
〈父親がチル小と松小2人に向って〉
父親
あきよ、あきよ 此ぬ二人(タイ)や 我が産子(ナシグヮ)やあらんがや
あきよ チル小 よーチル小 あきよ松小よ
姉弟
誠父親(マクトゥターリー)拝(ウガ)むしや 夢(ユミ)が又やゆら 雪晴(ユチハリ)て御太陽(ウティラ) 拝(ウガ)む心(ククル)
父親
言(ィ)やんてん我んね すぐわかゆん 確かに継母(ママウヤ) あんまーが 巧みにそうせ かわらんや 確かにかわらんや 今日(チュー)や我んね合点(ガッティン)さん
早(ヒェ)くなーなー くま戻(ムドゥ)ら
〈一時幕を閉め、道行きの場面に〉
〈神人ハーメー下手より出る〉
〔前奏〕
神人
我んど島々 音(ウトゥ)高(ダカ)さる
神人
(カミンチュ)ハーメど やいびーしが
田舎、田舎歩っちゃりば あんしん儲(モウ)きたる
家庭(チネ)や孫(ンマガ)ん待ちかんて 早(ヒェ)くなーなー くま戻(ムドゥ)ら
〔間奏〕
〈親子と出会う〉
神人
いえたり主(ス)ぬ前(メー) いえ親子(ウヤックヮ) 御墓参(ウハカメー)ど しみそうち
父親
あねあらんさ いえハーメ何(ヌー)がなとら うんずがひまどんやみせーら みくじうっぺー拝(ウガ)なびら
神人
あんせうみくじ拝(ウガ)なびら
〔神人台詞〕御願
神人(謡)
トートゥ トトゥ トートゥ
今日ぬ 佳かる日に
勝る日ゆ やぁ トートゥ
イヤ 子(ニ)でぃやーや にんじきて
丑(ウシ)どぅや やーや うしぬきて
卯(ウー)どう やーや うっとぅひっとう
しみてー きみそーんな
ハー アー エヘン オオン
千ぬ 御香 買うてぃ
万ぬ 御詫ん うんぬきやびーむぬ トートゥ
イヤ 住吉(シミユシ)や がじゅん 目ぬしん
うっち 波の上(ナンミン) 三重城(ミーグスク)
辻町(チージ) くしじん 御願ぬひら
ちじん こうじん せいこうじん
うりが たんかあ しらこうじん
入(イ)っちゃい 出(ン)じたい 芝居の門
みーむん やいびーたん
ハー ハー エヘン オホン
(台詞)
ウートートゥ 左(ヒジャイ)ぬ御神 右(ニジリ)ぬ御神
みーまんてぃ うたびみそーち千人万人(スニンマンニン) えーすえーごう
あらしみて うたびみそうち
なんじゃ塩(マース) 黄金塩
かみらち うたびみそうり
〈神人の御願が終わると継母は気が狂い実母の霊に手を引かれ下手より出る〉
〔唐船ドーイ〕
〈継母は竹の枝を持ち踊り狂う〉
〈神人は上手に入り、残り5名は下手に入る〉
亡母親 神人
第1幕 家の場面
〔かりき節 前奏〕
〈父親上手より出る〉
父親
うちんうかりらん 国頭(クンジャン)に行ちゅん やしが男子一人(イキガングヮヒチュイ)やしが、むしや先妻(サチトゥジ)去(ンジャ)る若夏(ワカナチ)
〔間奏〕
此(ク)の世(ユ)振り捨(シ)てて産子(ナシグヮ)二人(タイ)なぎて
無情(ムジョ)の世(ユ)の中 渡て我(ワ)ん一人(ヒトゥイ)あわりしみて
男一人(イキガチュイ)しや育(スダ)てぬならん
〔間奏〕
又と妻(トゥジ)とめて親子(ウヤックヮ)にしみて 継子(ママクヮ)、継母(ママウヤ)や ゆすどやゆる
あさましや 細々(クマグマ) とじきて行ちゅん
*とじきて:言いつけて
〔間奏〕
〈上手に向かって〉
父親
内に居る三人(ミチャイ)急じ此(ク)まに出(ンジ)てく「へい」
〈上手から継母、チル小、松小出る〉
継母
ぬーがやいびら
父親
貴女(イヤー)に言やねーならん事ぬあてる
継母
ぬーぬ用事(ユーズ)ぬ あてが やみせら
父親
うちんうかりらん 国頭に行ちゅん 戻て来(チュー)る間(エダ)や 親子3人(ウヤクミチャイ) 睦(ムチ)ましくに 可愛(カナ)さしち くり
継母
例い此ぬ二人(タイ)や 継子(ママクヮ)ゆやてん実産子(ジチナシグヮ) ゆかね 可愛(カナ)さ しゃびん
いひぃんすっとん にんじけ みしょんな
〈間奏で継母上手幕内に入る〉
松小
今日やいめんそうち 又何時(イチ)やいーめが
父親
十日(トゥカ) 二十日(ハチカ)内に 戻って来(チュウ)ぐと 継母(アヤー)御側(ウスバ)や 離りて しまんさ
〔間奏〕
チル小
あわり此ぬ二人(タイ)や 親に捨てらりて いえたい父親(ターリー) 継母(ママウヤ)ぬひでや かにんあぐと 用事(ユーズ)しまさは 早(ヘー)くめんそうりよ
父親
今日(チュウ)や行(ン)じ 明日(アチャ)や戻て来(チュー)ぐと継母(アヤ)御側(ウスバ)や 離りてしまんさ
〈父親家を出て下手幕内に入る〉
〈チル小、松小2人上手幕内に入る〉
第2幕 家の場面
〔チクタルメ節〕前奏1回
継母
我んど此ぬ家庭(チネ)ぬ 後妻(アトドゥミ)ぬ女(イナグ)やいびしが 此まに来(チ)っから楽やしち居(ウ)しが 先妻(サチトゥジ)や産子(ナシグヮ) 女子(ウナイ) 男子(イキイ) 産(ナチェ)る事やしが 良(イ)い時(バス) 夫(イキガ)ん留守に なて居(ウ)ぐと 今(ウ)の時(バス) 計て殺(クル)ち捨てら 内に居座(イシ)かとるあぬ女(イナグ) 急(イス)じ出(ンジ)てくー
〈上手幕内より次の台詞を唄いながら出る〉
チル小
ぬがたり継母(アヤ) 何(ヌー)がやいびら
継母
何(ヌー)がやらんで 貴方(ィヤー)にや しいくゎいみ
チル小
今(ナマ)ど我んね 布や 切(チ)やびたる
継母
誰(ター)がうぬよーな 仕事(シクチ)いいちきたが 此(ンマ)に居座(イシ)かとて 親(ウヤ)ぬ腹立てらゆい やかね 此(ク)の糸ん 急(イス)ぎ掛き満ちり 油断(ユダ)のさんぐと 急(イス)ぎ掛き満ちり
〈継母糸掛をチル小に渡し上手幕内に入る〉
〈チル小糸掛を持って次の台詞を歌う〉
〔道の島節〕
チル小
しばし母親(ハハウヤ)に 捨(シ)てられて我身(ワミ)や 又 母親(ハハウヤ)ゆとめて 母親(ハハ)ぬ言葉(クトゥバ)
〔間奏〕
しむちしむからん かねる 雪降(ユチフ)いに糸掛きる手荒(ティラ)い 急(イスジ)ぎ掛き満ちら
〔間奏〕
掛きてくぬ 糸(カシ)や足らんあやびむん片時(カタトゥチ)や母ぬ御側(ウスバ)ゆらな
〈上手より継母出ながら〉
〔クムイ節〕早口
継母
とじきてる仕事 すそにしち うちょて 朝夕(アサユ)我が肝(チム) ひー焼(ヤカ)すやから
チル小
掛きて此ぬ糸や 足らんあやびむぬ 親(ウヤ)と子(クヮ)ぬ中や 繰り返(ケー)し返(ゲー)し ゆしてたぼり
(早口)
継母
雪(ユチ)や降いまさて 松(マチ)ぬ下雪(シタユチ)や 押(ウ)し払い払い 払て置(ウ)きよ
油断のさんぐと うり くり持(ム)っち行き
〈継母がチル小にホーキを投げつける〉
〈チル小唄いながら舞台を掃く〉
〔道の島節〕前奏1回
''チル小'
雪(ユチ)や降(フ)いまさてよ 松(マチ)ぬ下雪(シタユチ)や 払て払りらん 暫(シバ)し母親(ハハウヤ)の御側(ウスバ)ゆらな
〔間奏〕〈少々早めに〉
〈継母上手より出る(少し早足)〉
継母
此処(クマ)うとて聞(チ)ちゃん さかしゆむ童(ワラビ) 朝夕(アサユ)我が肝(チム)ゆ 焼すやから
〔間奏〕1回
継母
行く先ぬあらば 母捜(トゥメ)て行きよ
〔間奏〕
継母
我(ワン)がど 着(クィ)してある 着物(チン) はじ取やい
此ぬままに出じて 行ちしみり 以後(クリ)から家庭(チネー)の あんとむな
チル小
女(イナグ)あてなしぬ 赤裸(アカハダカ)なゆみ
頼(タン)り親(ウヤ)がなし
頼(タン)り親(ウヤ)がなし 着物(チン)ぬん着(クィ)してたぼり 頼(タン)り親(ウヤ)がなし
継母
畜生者(チキショウムン)に着(クィ)して 腹(ハラ)ゆ立たゆいか 此のままに しんじゃんくんじゃん破(ヤイ)しがまし 以後(クリ)から家庭(チネー)の あんとむな
〈松小上手幕内より掛け足で出て継母にすがる〉
〔口説〕
松小
さりさり継母(アヤー)さり しばし待ちみしより
願事(ニゲイグトゥ)ぬあやびむぬ 待ちみしょり 頼(タン)り願事(ニゲイグトゥ) 聞(チ)ちたぼり
いかな継子(ママクヮ)と継母(ママハハ)ぬ 仲ゆやてん うりだきに悪(アク)や しみそうらんてん ゆたさやねーやびらに
例(タトゥ)い此ぬ二人(フタイ) 打ち果たち さりてん くがりてん 死じゃんてい
むしか此(ク)ぬ事(クトゥ) 世間(シケ)に表りらは うんじゅ一所(チュトゥクル)の 御顔(ウカウ)やあやびらん
あたらし父親(ターリー)御顔(ウカウ)にかかて いちゃびしが
継母
ぬんり言がひゃ 童(ワラビ) 何(ヌー)たる者(ムン)のちゃ 生れて見(ン)ちゃる
死じぇ見(ン)だに
チル小
あきさみよ いえたり継母(アヤー) 我ん殺(クル)しみしょり あて産子(ナシグヮ)ぬことや 許ちくみしょり
松小
暫(シバ)し いえたい姉(ンミー) 待ちょてくみしょり
姉弟(チョウデー)や まーからまーまで 一緒(ママ)どやいびーる
〔間奏〕
松小
男(イキガ)生まりとて 歳ぬ十二、三 いかな太刀(カタナバ)ん ぬんり恐(ウス)りゆが 親のど しみせびーぐと ゆたさどあいびいる うりさり 我んから一番殺(クル)ちくみしょり
継母
親(ウヤ)の言(イイ)し聞(チ)かんゆいからど 我身(ワミ)ん戒(イマシミ) あてゆぐと
いやーや内んじ 食物(ムン)ゆちり喰え いやーや以後(クリ)から 家庭(チネー)に 足(ヒサ) 入りらわど
〈継母上手幕に入る〉
〈チル小正面向って〉
(連つらね)
チル小
継母(アヤー)ぬ気持(チムチ)に逆(サカラー)て 出(ン)じて行ちゃびむの あて産子(ナシグヮ)童(ワラビ)
怪我ん ねんぐとに
手取(ティトゥ)て引合(ヒチアーチ)たぼり
南無阿弥陀仏(ナンマイダーブトゥキ)
第3幕 道行き 墓の場面
〔子持節〕
なくがなし泣ちん 聞く人や居らぬ
共に泣くものや 山のひびき
〔道の島節〕
チル小
育てらん親(ウヤ)ぬ 何故(ヌユ)で我ん産(ナ)ちゃが 朝夕墓通(カユ)て 泣ちどぅ暮らす
「母親(アヤー)たい」
〈チル小墓にもたれ泣く〉
〔アーキー〕
あーきー 夢がやゆら
〔仲順流れ節〕
亡母親
ぬーが産子(ナシグヮ)よ くまに来(チャ)が 朝夕墓通(カユ)て 泣ち明かす
アケズの飛(トゥ)ばわん 実母(ファファ)と思(ウム)り ハビルの飛(トゥ)ばわん 実母(ファファ)と思(ウム)り
夏(ナチ)ぬよ 雨風(アミカジ)ん雨(アミ)と思(ウム)な 冬ぬよ 霜(シム)かきん霜(シム)と思(ウム)な
戻(ムドゥ)て戻ららん 死後(グソー)の道 朝夕実母(ファファ)が 涙(ナダ)と思(ウム)り
節々(シチビチ)ぬ祭事(マチリグトゥ) 遅(ウク)りるな うりど死後(グソー)の 孝行なゆさ
我身(ワン)が継母(ママウヤ)や 戒(イマシ)みーん 此処(クマ)から宿に 立ち戻(ムドゥ)り
〔親ぬ心節〕前奏
〈松小下手より着物を持って姉捜しに出る〉
松小
継母(ファファ)の気持(チム)ちに逆(サカ)て 姉(ンミー)や追(ウー)いゆ出(ン)じゃさりて 追(ウー)いゆ放さりて
腹一つ(ティーチ)ぬ姉弟(チョーデー) 捨(シ)てて捨(シ)てらりみ かねる雪(ユチ)降いに 着(チ)る着物(チン)や はがり
継母(ファファ)ぬ目(ミ)ゆ隠り 此の着物(チン)や持ちゃい 姉(ンミ)が後とめて 見らんてん我身や
物忍(ムヌシヌ)び忍(シヌ)で 今(ナマ)ど我身(ワン)ね出じ立つど
あきよ姉(ンミ)よ 起(ウキ)てくり姉(ンミ)語る事あむぬ
でかさり姉(ンミ) 戻(ムドゥ)やびら いえ姉(ンミ)
チル小
あきよあて弟子(イキイ)や 我身(ワン)ぬ事と思(ウム)て 此処(クマ)迄来(チャ)んな 玉黄金(タマクガニ) 玉黄金(タマクガニ)
松小
姉(ンミ)やちょん雪(ユチ)に ちみらりて後ど 匂(ニウ)いやまさゆる浮世(ウチユ)さみ いえ姉(ンミ)
チル小
苦(クリ)さ思(ウ)み忘(ワシ)て 行かんていすりば 今(ナマ)いめる継母(ハハ)に 孝行や又ならん
急(イス)ぎ立ち戻(ムドゥ)て 今(ナマ)いめる継母(ハハ)に 孝行念(ニン)入り 玉黄金(タマクガニ) 玉黄金(タマクガニ)
松小
姉(ンミ)や我んゆかね 歳や 上(イー)ゆやりば 実母(ファファ)ぬ面影(ウムカジ)ん 拝(ウガ)みなりすみて
我んね懐(フチクル)に 抱かりて居(ウ)る時(バス)離りやびて 別りやびて
別りやびて実母(ファファ)と夢(ユミ)うちち心(グクル)あきよ姉(ンミ)よ 我んね ちゃすがや
りかさり早(ヒェ)くな 戻(ムドゥ)やびら いえ姉(ンミ)
チル小
あきよ あて弟子(イキイ)や しかさわん聞(チ)かん むむしがい しがて 離せーならん
〈2人墓前に座っている〉
〈父親は国頭での用事を終えて帰る 下手より出る〉
〔赤田首里殿内節〕
父親
用事(ユーズ)ん済まちゃい 立ち戻(ムドゥ)ら家庭(チネ)や妻子(トゥジックヮ) 待ちかんてそうらどーんで思(ウ)みば
目(ミー)ぬ前(メー)に立ちまさて 座(イ)ちん立ちん うらりらん 早(ヒェ)くなーなー くま戻(ムドゥ)ら
〔間奏〕
父親
今日(チュー)や何(ヌー)がやゆら 産子(ナシグヮ)面影(ウムカジ)立ちまさて目(ミー)ぬ前(メー)にさがとて 暮さらん
歩りん 歩まらん クルマトーバルなて行ちゅん
〈間を置く〉
〈父親がチル小と松小2人に向って〉
父親
あきよ、あきよ 此ぬ二人(タイ)や 我が産子(ナシグヮ)やあらんがや
あきよ チル小 よーチル小 あきよ松小よ
姉弟
誠父親(マクトゥターリー)拝(ウガ)むしや 夢(ユミ)が又やゆら 雪晴(ユチハリ)て御太陽(ウティラ) 拝(ウガ)む心(ククル)
父親
言(ィ)やんてん我んね すぐわかゆん 確かに継母(ママウヤ) あんまーが 巧みにそうせ かわらんや 確かにかわらんや 今日(チュー)や我んね合点(ガッティン)さん
早(ヒェ)くなーなー くま戻(ムドゥ)ら
〈一時幕を閉め、道行きの場面に〉
〈神人ハーメー下手より出る〉
〔前奏〕
神人
我んど島々 音(ウトゥ)高(ダカ)さる
神人
(カミンチュ)ハーメど やいびーしが
田舎、田舎歩っちゃりば あんしん儲(モウ)きたる
家庭(チネ)や孫(ンマガ)ん待ちかんて 早(ヒェ)くなーなー くま戻(ムドゥ)ら
〔間奏〕
〈親子と出会う〉
神人
いえたり主(ス)ぬ前(メー) いえ親子(ウヤックヮ) 御墓参(ウハカメー)ど しみそうち
父親
あねあらんさ いえハーメ何(ヌー)がなとら うんずがひまどんやみせーら みくじうっぺー拝(ウガ)なびら
神人
あんせうみくじ拝(ウガ)なびら
〔神人台詞〕御願
神人(謡)
トートゥ トトゥ トートゥ
今日ぬ 佳かる日に
勝る日ゆ やぁ トートゥ
イヤ 子(ニ)でぃやーや にんじきて
丑(ウシ)どぅや やーや うしぬきて
卯(ウー)どう やーや うっとぅひっとう
しみてー きみそーんな
ハー アー エヘン オオン
千ぬ 御香 買うてぃ
万ぬ 御詫ん うんぬきやびーむぬ トートゥ
イヤ 住吉(シミユシ)や がじゅん 目ぬしん
うっち 波の上(ナンミン) 三重城(ミーグスク)
辻町(チージ) くしじん 御願ぬひら
ちじん こうじん せいこうじん
うりが たんかあ しらこうじん
入(イ)っちゃい 出(ン)じたい 芝居の門
みーむん やいびーたん
ハー ハー エヘン オホン
(台詞)
ウートートゥ 左(ヒジャイ)ぬ御神 右(ニジリ)ぬ御神
みーまんてぃ うたびみそーち千人万人(スニンマンニン) えーすえーごう
あらしみて うたびみそうち
なんじゃ塩(マース) 黄金塩
かみらち うたびみそうり
〈神人の御願が終わると継母は気が狂い実母の霊に手を引かれ下手より出る〉
〔唐船ドーイ〕
〈継母は竹の枝を持ち踊り狂う〉
〈神人は上手に入り、残り5名は下手に入る〉