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第11章 渡慶次の芸能と年中祭祀
第3節 歌劇「イサヘイヨー」
イサヘイヨーの本歌は、久高島と津堅島の若者の恋物語を歌ったものであるが、1940年(昭和15)頃に、新垣※※(ナビー川上(カーカン))が青年団の演劇として現在演じられているイサヘイヨーに演出(振り付け)したものである。
その後、青年会や各団体が諸々の行事で演じ今日まで好評を博してきた。このイサヘイヨーは、他字には無い素晴らしい渡慶次の伝統芸能であり長く後世に継承できる事を願うものである。
※伝統芸能を継承するため、出演団体は下記の衣装を着装すること。
〔衣装〕
御旦那(ウダンナ)
紋付羽織、中折り帽子、黒足袋、ゾーリ、扇子
アヤ小前(グヮーメー)
クジリゴーシ、鬘(かつら)、ゾーリ、蛇の目傘
三良(サンラー)
クンジー、羽織、半タイツ、鬘、赤褌、手拭い、
ゾーリ、棒オーダー(重箱と酒壷)
マカテェ小
芭蕉衣、下着(半タイツ)、鬘、風呂敷小包(重箱)、ゾーリ
〔衣装〕
御旦那(ウダンナ)
紋付羽織、中折り帽子、黒足袋、ゾーリ、扇子
アヤ小前(グヮーメー)
クジリゴーシ、鬘(かつら)、ゾーリ、蛇の目傘
三良(サンラー)
クンジー、羽織、半タイツ、鬘、赤褌、手拭い、
ゾーリ、棒オーダー(重箱と酒壷)
マカテェ小
芭蕉衣、下着(半タイツ)、鬘、風呂敷小包(重箱)、ゾーリ
第1場 道行
[アカチラ節]
〈アヤ小前、マカテェ小、上手より出る〉
アヤ小前
今日(キユ)や名に立ちゅる 三月(サングヮチ)ぬ遊(アシ)び りちゃよ押連(ウシチリティ)れて遊(アシ)り来(ク)や マカテェ小
マカテェ小
あんやいびさたりアヤ小前(グヮーメー) 今日や名に立ちゅる 三月ぬ遊び 遊りちゃびらアヤ小前
イェータリ イェータリアヤ小前 我んねサバ小忘りやびてぃ 取(トゥ)って来(チャ)びらアヤ小前 ウリタリ ウリタリ 此(ク)りや うんじゅ持(ム)っちょてぃきゅみそうれ
アヤ小前
常日頃(ヒージー)からぬ ウフソー者(ムン) 急(イス)じ取ってぃ来よや
〈アヤ小前、舞台右前方で傘を差し、座る〉
〈御旦那、三良、下手より出る〉
[ハイニーセーター節]
御旦那
今日(キユ)や名に立ちゅる
三月(サングヮチ)ぬ遊(アシ)び でぃちゃよ押連(ウシチリティ)れて遊り来クや やー三良
三良
あんやいびささり さり
御旦那(ウダンナ) 今日や名に立ちゅる 三月(サングヮチ)ぬ遊び 遊りちゃびら さり御旦那 御歩(ウア)ちみせーびり
〈アヤ小前の近くまで歩み寄る〉
御旦那
いぇー 三良 いぇー あま見(ン)ちょみ あんしん美(チュ)らさぬ 女(イナグ)んうるや
やー三良
(三良、アヤ小前を見てから)
三良
あんやいびささり さり御旦那 あんしん美(チュラ)らさぬ 女(イナグ)んうやびる さり 御旦那
御旦那
んだ んだ 三良 しかきてぃんだい
三良
しかきてぃめんそり 我んね あまんじ隠りてぃうやびら
〈三良 下手に入る〉
[イサヘイヨー節]
御旦那
イサヘイヨー 汝(イ)った家(ヤー)や 何処(マー)ぬ 何(マ)んぐらが
〈アヤ前小、傘をたたみ立ち上がる〉
〈アヤ前小、傘をたたみ立ち上がる〉
アヤ小前
道ぬ辻道(アジマー) ユウナぬ
下(シチャ)ど イサヘイヨー
御旦那
イサヘイヨー 汝(イ)った家(ヤ)とぅ隣(トゥナイ)やとてぃ 今日(キユ)ん明日(アチャ)ん遊びぶしゃぬ イサヘイヨー
イサヘイヨー 好(シ)かんどぅ我んね後(クシ)なち立っちょうるい
アヤ小前
好かのあらんさ 肝(チム)ちゃがなさぬ イサヘイヨー
御旦那
イサヘイヨー 是(ウリ)だき 言ちん 不納得(ウティチカン)ありば 前ぬ 崖下(ハンタ)に 落(ウティ)てぃみしら
アヤ小前
まじ 待ちみそうり イサヘイヨー 貴方(ウンジュ)が是(ウ)だき気(チ)に懸(カ)かてぃいめら 明日(アチャ)ぬ12時 探(トゥメェ)てぃめんそうれ イサヘイヨー
〈アヤ小前、上手に入る〉
御旦那
うねひゃー うねひゃ 手柄(ディカチャ)ぬうちやさ
〈御旦那、下手に入る〉
※※※三良・マカテェ小の場※※※
〈三良下手より、マカテェ小上手より同時に出る〉
三良
イサヘイヨッ 汝(イ)った家(ヤー)や 何処(マー)ぬ 何(マ)んぐらが
マカテェ小
道ぬ辻道(アジマー) ユウナぬ 下(シチャ)ど イサヘイヨー ヤーラシ クイクイ
三良
イサヘイヨッ 汝(イ)った家(ヤー)とぅ隣(トゥナイ)やとてぃ 今日ん明日(アチャ)ん遊びぶしゃぬ イサヘイヨッ ヤーラシ クイクイ
イサヘイヨッ 好(シ)かんどぅ我んね 後(クシ)なち立っちょうるい
マカテェ小
好かのあらんさ 肝(チム)ちゃがなさぬ イサヘイヨー ヤーラシ クイクイ
三良
イサヘイヨッ 是(ウリ)だき 言ちん 不納得(ウティチカン)ありば 前ぬ 崖下(ハンタ)に 落(ウティ)てぃみしら
〈三線、ソン〉
マカテェ小
まじ 待ちみそうり
イサヘイヨッ 貴方(ウンジュ)が是(ウリ)だき気(チ)に懸(カ)かてぃいめら 明日(アチャ)ぬ12時 探(トゥメェ)てぃめんそうれ イサヘイヨー ヤーラシ クイクイ
三良
うねひゃー うねひゃ 手柄(ディカチャ)ぬうちやさ
〈マカテェ小上手に、三良下手に入る〉
第2場
※※※アヤ小前家の前(ヤーヌメー)の場面※※※
〈御旦那下手より出る〉
[茶売節]
御旦那
約束(ヤクシク)ぬ12時 遅(ウク)りてぃ駄目(シマン)さ 急(イス)じ行きわるやる足早みてぃ
〈一周して入り口近くまで〉
御旦那
約束(ヤクシク)ぬ12時 探(トゥメェ)てぃ来(チョ)しが 愛(カナ)し思無蔵(ウミンゾ)や居(ウ)らんがや
〈マカテェ小 上手より出て舞台前方中央まで出る〉
マカテェ小
垣(カチ)ぬ葉(ファ)ぬ 鳴りは 里がやらんでぃ 思(トゥムゥ)てぃ御門(ウジョウ)や 7往復(ナナケーン) 行ち戻いしみてぃ 貴方様(チクショムヌ)や 内に入みそうれ でぃか行ちゃびら
〈アヤ小前、急ぎ足で出る〉
アヤ小前
いぇへゃー いぇへゃー涯分(フゥジェー)ねーらん 御旦那ぬ前うてぃ あんすんな 内に行ちくぇ
マカテェ小
我がやあやーびーらん 御旦那がる 徒(ワチャ)くしみせーたる 醜男(ヤナカーギー!)
〈マカテェ小、上手に入る〉
アヤ小前
垣(カチ)ぬ葉(ファ)ぬ 鳴りは 里がやらんでぃ
思(トゥムゥ)てぃ御門(ウジョウ)や 7往復(ナナケーン) 行ち戻いしみてぃ
貴方様(チクショムヌ)や 内に入みそうれ でぃか行ちゃびら
〈御旦那、アヤ小前 上手に入る〉
〈三良、下手より出る〉
三良
約束(ヤクシク)ぬ12時 遅(ウク)りてぃ駄目(シマン)さ 急(イス)じ行きわるやる足早めてぃ
〈一周して入り口近くまで〉
三良
約束(ヤクシク)ぬ12時 探(トゥメェ)てぃ来(チョ)しが 愛(カナ)しマカテェ小居(ウ)らんがや
〈マカテェ小 上手より出る〉
マカテェ小
垣(カチ)ぬ葉(ファ)ぬ 鳴りは 里がやらんでぃ 思(トゥムゥ)てぃ御門(ウジョウ)や 7往復(ナナケーン) 行ち戻いしみてぃ 貴方様(チクショムヌ)や 内に入みそうれ でぃか行ちゃびら
〈三良、マカテェ小 上手に入る〉
※※アヤ小前家の前 夜明けの場※※
〈御旦那、急ぎ足で上手より出る。アヤ小前後を追いかけ出る〉
[デンサー節]
アヤ小前
鶏唄(トゥイウ)ては里前(サトゥメー) 何故急(ヌガイス)じみせる 限(カジ)りせる 鐘(カニ)ぬ鳴らはいもりデンサ
御旦那
鶏ん鳴(ナ)ち終(シマ)ち やがてぃ夜(ユ)ん明きさ 他所目無(ユスミネ)ん内に 急じ逃(ヌ)ぎらデンサ
アヤ小前
他人(タル)が 何(ヌ)でぃ言ちん 心変(カワ)るなよヨー里前(サトゥメー) 他所(ユス)や花散らす 嵐でむぬデンサ
情きどうや此(ク)ぬ手拭(ティサジ)
御旦那
形見どうや 指環(イービナギー)
御旦那・アヤ小前
今世(クヌユ)から 後世迄(アヌユマディ)ぬ契(チジ)りデンサ
〈2人舞台左に座る〉
〈三良、マカテェ小急ぎ足で上手より出る〉
[出羽 三線ソン・太鼓]
マカテェ小
鶏唄(トゥイウ)ては里前(サトゥメー) 何故急(ヌガイス)じみせる 限(カジ)りせる 鐘(カニ)ぬ鳴らはいもりデンサ・スーリデンサ
三良
鶏ん鳴ち終(シマ)ち やがてぃ夜ん明きさ
他所目無(ユスミネ)ん内に 急じ逃(ヌ)ぎらデンサ・スーリデンサ
マカテェ小
他人(タル)が 何(ヌ)でぃ言ちん 心変(カワ)るなよヨー里前 他所(ユス)や花散らす嵐でむぬデンサ・スーリデンサ
マカテェ小
情きどうや此ぬかんざし(ジーファーグヮ)
三良
形見どうや此ぬ草履小(サバグァ)
三良・マカテェ小
後世(アヌユ)から 今世(クフヌ)迄ぬ契り デンサ・スーリデンサ
〈御旦那とアヤ小前に向って〉
三良・マカテェ小
うんじゅなに 真似(マニ)やびてぃ
我々(ワッタ)ん 此(ク)ぬぐとぅなやびたん 後世(アヌユ)から 今世迄(クヌユマディ)ぬ契(チジ)りデンサ・スーリデンサ
御旦那・アヤ小前
今日ぬ誇(フク)らしゃや 何事(ムヌ)に例(タトゥ)ららん 二箇所(タトゥクル)ぬ 夫婦(ミートゥンダ) 踊(ウドゥ)てぃ戻(ムドゥ)らデンサ
三良・マカテェ小
あんさびらさり
−−−白保節−−−
〈歌の上句は御旦那、アヤ小前が前列。踊り終わると2人は下手ヘ〉
〈下句は三良とマカテェ小が踊る〉