続 渡慶次の歩み
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第11章 渡慶次の芸能と年中祭祀

第5節 組踊「矢蔵の比屋」の解説と脚本

 

解説

 この組踊は、今から250年ほど前に中部地区の旧西原村、中城村、美里村辺りを舞台として創作された。
 渡慶次に伝わり、上演されたのは、今から100年ほど前で、屋号前山内の山内※※が恩納村瀬良垣の知人を頼って習得し、渡慶次で上演した組踊だといわれている。
 その後、沖縄戦で脚本も焼失した。そこで、1978年(昭和53)4月、神谷※※が渡慶次の先輩達から聞き取り、清書したのが今日に伝わる脚本となっている。
 

あらすじ

 幸地の主矢蔵の比屋(ヤグラヌヒヤ)は、津堅田の按司(チキンダヌアジ)と棚原の按司(タナバルヌアジ)を討ち滅ぼし、天下を我がものにした。この世の享楽を欲しいままにし、女道楽に興ずるのであるが、津堅田の按司の妻も我が手に入れようと姦計(かんけい)の限りを尽くし、とうとう自殺にまで追いやった。
 さらに、棚原の按司の妻乙樽と子虎千代を捜し捕らえさせ、そして乙樽を側女(そばめ)に置く目的で、邪魔になる虎千代を金武寺に座主の弟子として追いやる。乙樽は、矢蔵の城内に監禁されているが、矢蔵の野心を見抜き、病気だと偽って矢蔵をだまし、意のままにならない。矢蔵は恋心やるかたなく、夜も昼も酒を飲み明け暮れている。
 乙樽は煩悶の明けくれであるが、ある夜、金武寺にいる産子虎千代が、山盗人に出会い殺されるという夢を見る。じっとしておられず、真夜中に城を抜け出し金武寺に向かう。真夜中のこととて暗さに道に迷い、美里村、登川兼箇段の御主前宅に泊めてもらうが、山盗人におそわれ、着物をはぎ取られた上に殺されたのである。虎千代が殺されるという夢は、逆に自分が殺されるという正夢だった。
 その翌日、虫のしらせか、虎千代は母が災難に遭遇しているような予感におそわれ、心おだやかならず、寺より暇をもらい母を探し求めて道に迷う。途中、墓前に花をまつっている御主前に出会う。
 御主前の説明で、葬られているのが自分の母だと知り、嘆き悲しみのあまり自分も死のうとするが、御主前に止められ、母からの遺言を聞かされる。
 御主前の計らいと協力で、山盗人は討ち取ったが、虎千代は宿敵矢蔵の比屋を打つことを俄に思い立ち、津堅田の山戸を訪ねるため、ここで御主前に礼を述べ、再会を約して別れを告げる。
 虎千代は、中城村伊集村に山戸を訪ね、矢蔵の比屋を討つ機をうかがっている。丁度そのころ、虎千代の守役森川の比屋(ムイカーヌヒヤ)と内間の子(ウチマヌシー)2人が、虎千代が伊集村に身を隠していることをもれ聞いて訪ねてきた。
 棚原の按司の産子(ナシグヮ)虎千代に、津堅田の按司の産子山戸(ヤマトゥ)、虎千代の守役森川の比屋、それに内間の子(ウチマヌシー)4名が落ち合い、宿敵矢蔵の比屋を打つ手配をなし、めでたく本懐をなし、元の城に戻る場面で幕となる。
 
登場人物
 矢蔵の比屋、呉屋の大役、嘉手苅の子、虎千代、乙樽、御主前、
ハーメー、山盗人(上地モーヤー、越来どん)、森川の比屋、
内間の子、山戸、平良、門番

 
 第1幕
矢蔵の比屋
出(ディ)よう来(チャ)る者(ムヌ)や 幸地の主(アルジ)矢蔵の比屋 津堅田(チキンダ)の按司と棚原(タナバル)の按司や 我身(ワミ)ゆいんまさて いちゆいがさやりば 我侭(ワガママ)にならん はかり事たばかやい 二人(フタイ)の按司殺(クル)ち今(ナマ)ど胸明(ンニアキ)る 我が上の(イーヌ)空や飛び鳥(トゥイ)ん飛ばん 花盛女色々(ハナザカイイナグイルイル)に選(イラ)でぃ あの村に遊び 此の村に遊で 生楽(イチラク)の類(タグイ)する事どやしが 津堅田(チキンダ) の産子(ナシグヮ) 棚原(タナバル)の妻子(トゥジックヮ)取(トゥ)い逃(ヌ)がちねらん ぬぎはして居(ウ)らん 許ち置(ウ)ちからや 生ちきてぃうちからや 後々になりば弓引ちゅんとめば とてんあのかんだ 根葉(ニハ)までん刈やい 浮世(ウチユ)楽々と暮しぶしゃぬ
やあ 呉屋の大役(グヤヌウフヤク)
嘉手苅の子(カディカルヌシー)
 
〈2人登場〉
呉屋の大役・嘉手苅の子
ふう
 
矢蔵の比屋
津堅田の産子(チキンダナシグヮ) 棚原の妻子(タナバルトゥジックヮ) 取(トゥイ)り逃(ヌ)がちうらん 逃走(ニぎハ)てて居(ウ)らん 後々(アトアト)なりば 弓引(ユミヒチュ)らとめば 片時(カタトチ)ん急(イス)じ島々よ廻(ミグ)て 探しあらたみて からみ出(ンジャ)ちちょうり
 
呉屋の大役
召(ミ)せる事 此の二人(タイ)世界(シケ)に許ちうちからや 後々の事障(クトゥザワ)り 弓引(ユミヒチュ)らと思(ミ)ば 片時(カタトチ)ん急(イソ)じ島々よ廻(ミグ)て 探しあらたみて からみ取やい来(チャ)びら
 
矢蔵の比屋
とうとう 肝(チム)に肝(チム)しいて念(ニン)ゆ入りゆ
 
呉屋の大役・嘉手苅の子
御拝留(ウガントゥ)みやびて
 
〈3人退場〉
 
 第2幕
〈呉屋の大役と嘉手苅の子登場〉
呉屋の大役
幸地の臣家(シンカ)呉屋の大役(グヤウフヤク)嘉手苅ぬ子(カデカルシー)島々よ廻(ミグ)て 里々よ忍(シヌ)で 細々(クマグマ)と探(トゥメユ)しが あの二人(タイ)が妻子(トゥジクヮ) 行き方(イチカタ)ん知らん後方(アトカタ)ん 見らん 聞きば中城伊舎堂(イサドゥ)の村に 隠れやい居(ウ)んて しらしべのありば 百勇(ムムイサ)み勇(イサ)で忍び行ちゅん
 
嘉手苅の子
さり 伊舎堂(イサドウ)の村に着(チ)ちゃびたん
 
呉屋の大役
事急(クトゥイス)じしちや しすんじのあむぬ みすく心落着(ククルウティチ)ちょうて 立聞(タチヂチ)ゆすらに
〈2人耳をそばだてながら探し歩く〉
[龍落し]
呉屋の大役
この宿の内や いと不思議(フシジ)でもの 棚原(タナバル)の妻子(トゥジクヮ)疑(ウタゲ)やねらん
急(イス)じ踏み入やい からめ出(ンジャ)ち来(キ)ようり
 
〈嘉手苅の子が棚原の妻子を連れ出してくる〉
 
呉屋の大役・嘉手苅の子
いや いちゃがいちゃが
 
乙樽
人違(ヒトゥチゲ)やあらに 科(トゥガ)んねん我身(ワミ)に 縄(チナ)ゆ掛(カキ)ゆしや 無理やあらに
 
呉屋の大役
人違(ヒトゥチゲ)んあらん 見しまちど居ゆる 棚原(タナバル)の妻子(トゥジクヮ)疑(ウタゲ)やねらん
姿(シガタ)ちが故(ユイ)に百忍(ヒャクシヌ)び忍(シヌ)でぃ 番所走廻(バンジュハイミグ)る内る又やたる 物事(ムヌグトゥ)よ多(ウフ)さ 急(イス)が急(イス)が
 
虎千代
我身(ワミ)やしみゆらば如何程(イチャフドゥ)んしみり 頼(タン)でぃ母親(ハハウヤ)や許ちたぼり
 
呉屋の大役
いや 推参(シイサン)な事(クトゥ)言うな
 
虎千代
ああ 口惜(クチウ)しや残念(ザンニン) 義理(ジリ)の道知らん悪のやちばら
 
呉屋の大役
いちさかし童(ワラビ) 言(イ)る事のにくさ しみ縄ぬうるさ なひん くんしみり
 
嘉手苅の子
いや いちゃが いちゃが
 
呉屋の大役
とうとう 急(イス)が急(イス)が
−幕−
 
 第3幕
〈矢蔵の城に戻り、幕内に向かって〉
呉屋の大役
さり按司加那志(ガナシ) 棚原(タナバル)の妻子(トゥジクヮ) からみやい来(チャ)びたん
 
矢蔵の比屋
(幕内詞)
とうとう 出来た出来た
〈矢蔵の比屋が登場する〉
矢蔵の比屋
いちゃる働(ハタラチ)きに からみやい来(チ)ちゃが
 
呉屋の大役
さり 按司加那志(ガナシ) 島々廻(ミグ)て様々にさがち 行方(イチカタ)ん知らん さしちまて居(ウ)たん
中城伊舎堂(ナカグシクイシャドウ)やたよい島やとて 隠(カク)りやい居(ウ)んり 知らしべのあとて 直(シグ)に走(ハシ)ゆやい
からみやい来(チ)やびたん
 
矢蔵の比屋
やあ 棚原(タナバル)の妻子(トゥジックヮ) みすく聞(チチ)とみりうかが按司主位(スイ)と 津堅田(チキンダ)の按司や
肝暗(チムグラ)さ腹暗(ハラグル)さ傲(ウグ)り者(ムヌ)やとて 生(イチ)きて置(ウ)ちしまん 討ち果ちあしが やあ嘉手苅の子(シー)
悪按司(アクアジ)の種や 生(イチ)きて置(ウ)ちしまん 急(イス)じ引立(ヒチタ)て 殺(クル)ち来(チ)ようれ
 
嘉手苅の子
御拝留(ウガントゥ)みやびて
さあさあ 立ちようり立ちようり
 
矢蔵の比屋
やあ 嘉手苅の子(シー) 急じうぬ童(ワラビ) 引戻(ヒチムドゥ)ち来(チ)ようり
 
嘉手苅の子
御拝留(ウガントゥ)みやびて
 
矢蔵の比屋
なるなるの目眉(ミマユ) 口色(クチイル)の美(チュラ)さ 殺(クル)すしや惜(イチャ)さあむぬ 乙樽(ウトゥダル) 仕合わせ袖(スディ)に
いとの縁(イン)結(ムス)で
夢(イミ)の間の 浮世(ウチユ) 楽ゆすらな
 
乙樽
女身(イナグミ)ぬ習(ナレ)ぬ 夫(ウトゥ)二人(フタイ)持(ム)ちゅみ 急(イス)じ引立(ヒチタ)てて殺(クル)ちたぼり
 
矢蔵の比屋
いらん義理(ジリ)立てて 産子(ナシグヮ)諸共(ムルトゥム)に 殺(クル)さりてからや 棚原(タナバル)の後や 残(ヌク)る者(ムヌ)居(ウ)らん
勘違(カンチゲ)いあらに ちくぢくと後の事 考(カンゲー)て見ようり
 
乙樽
玉や砕けてん光ある習(ナレ)い 竹(ダキ)や焼(ヤキ)るとん節(フシ)や失わん 女身(イナグミ)よやてん義理(ジリ)や失いみ
片時(カタトチ)ん急(イス)じ殺(クル)ちたぼり
 
虎千代
やあ母親(ハハウヤ)よ 永らいて居(ウ)とて苦(クチ)さする故(ユイ)か 按司主位前(スイメー)とめて 急(イス)じぶしゃぬ
 
矢蔵の比屋
いちさかし童(ワラビ)言る事の惜(ニク)さ 急(イス)じ引立(ヒチタ)て殺(クル)ちちょうり
やあ 呉屋(グヤ)の大役(ウフヤク) あの童急(ワラビイス)じ引ちむどち 来(キ)ようり
 
呉屋の大役
御拝留(ウガントゥ)みやびて
やあ 嘉手苅の子(シー) 急(イス)じあの童引戻(ワラビヒチムドゥ)ち 来(キ)ようり
 
嘉手苅の子
御拝留(ウガントゥ)みやびて
 
矢蔵の比屋
やあ 玉の乙樽(ウトゥダル) 虎千代が命助(イヌチダシキ)やい呉(クィ)らば 頼(タン)で我願(ワガニゲ)になりて呉(クィ)りゆ
 
乙樽
虎千代が命(イヌチ)御助(ウタシ)きゆありば 義理(ジリ)ん失やい御言葉(ウクトゥバ)になりら
 
矢蔵の比屋
おう したいしたい 神の御助(ウタシキ)か 今日(キユ)のふくらしゃや 天(ティン)の白雲(シラクム)に登(ヌブ)る心地(ククチ)
とうとう縄(チナ)ゆとち許ちとらさ
 
乙樽・虎千代
ああとうと
 
乙樽
願事(ニゲグトゥ)のあむの うんぬきてぃたぼり 恥かさや我身(ワミ)ぬ親子押(ウヤクウ)しちりて
ただ足にまかちあわてさま出(ンジ)て あの村に忍び この村に隠り 鶏(トゥイ)の暮しさる故(ユイ)がやゆら
根気(クンチ) 失やい 我肝(ワチム)ちいぢいとなやい又行きば按司主位前(スイメー)御側(ウスバ) 朝夕なりすみて居(ウ)らんていすりば
恐(ウトゥ)るさゆあむぬ 親(ウヤ)ぐみさあむぬ 医者たゆて薬飲(クスイヌ)みぶしゃよあむぬ うぬ内やたんで許ちたぼり
 
矢蔵の比屋
病気(ビョウチ)どんやりば うかっとしやしまん 用心(ユウジン)の事に手付(ティウチ)ゆしゅるな
 
乙樽
御慈悲御情(グジヒウナサキ)ぬ按司の御言葉(ウクトゥバ)や なりて我袖(ワスディ)に露(チユ)ど落(ウ)てぃる
 
矢蔵の比屋
やあ嘉手苅の子(シー) あの童連(ワラビチ)れて金武寺(チンディラ)に行ちゃい 御願事上(ウニゲグトゥアギ)て 座主(ジャシュ)の弟子なちゃい
十二、三なりば 頭(カシラ)とぅい下(ウトゥ)ち 紺染(クンズミ)ぬ衣裳(クルム)着(キ)してたぼりてい みしく細々(クマグマ)と頼み来(キ)ようり
 
虎千代
母親(ハハウヤ)の御側(ウスバ)朝夕なりそめて 知らん山寺にいちゃし行ちゃびいが
 
乙樽
玉黄金産子(タマクガニナシグヮ) 命(ヌチ)のためでむぬ かなしふやかりん しらななゆみ
 
虎千代
やあ母親(ハハウヤ)ゆ 哀り此(ク)ぬ二人(タイ)が今日(キユ)のうち苦(クリ)さ 天(ティン)の運やりば永らいて居(イ)もり
廻(ミグ)り逢う節(シチ)に又ん拝(ウガ)ま
 
嘉手苅の子
やあ思子(ウミグヮ) ちわまとる事や 思切(ウムチ)やいみしょり 遠(トゥ)く山路(ヤマミチ)や急(イス)がにばしまん
とうとう 御立(ウタ)ちみしょうり
 
乙樽
やあ嘉手苅の子(シー) 虎千代が事や 今(ナマ) 童(ワラビ)でむぬ 頼(タ)んでかながなと連(チ)りてたぼり
 
嘉手苅の子
いちぐかながなと わんゆいんすむぬ 打連(ウチチ)りぬ事や気遣(キジ)けゆみしょな
 
乙樽
やあ産子(ナシグヮ) 命(ヌチ)の為(タミ)ともて 思切(ウミチ)やいうしが 誠くりまでの別りと思(ミ)ば
 
虎千代
やあ母親(ハハウヤ)よ 永らいて居もり 又ん拝(ウガ)まびら
 
【歌】[干瀬節]
 互に泣ち別て 散々になてん
 
嘉手苅の子
遠(トゥー)く山路(ヤマミチ)や急(イシ)がにばしまん とうとう御立(ウタ)ちみしょり
 
【歌】[干瀬節]
 永らいていもり 又ん拝がま
 
矢蔵の比屋
やあ乙樽(ウトゥダル) 虎千代が事に気遣(キジ)けしるな 金武(チン)の座主かいうんが事や 座主内なかい
慈悲な座主でむぬ いちぐかながなとう 育(スダ)てらんしゅむぬ
とうとう内に入りゆ
−幕−
 
〈間の者(マルヌムン)〉
平良
とんじたる者(ムヌ)や 元棚原(タナバル)の按司の御馬(ウンマ)の草刈(クサカ)りしゅたる 平良(ティーラ)どやゆる
元主人の御使(ウチケー)い 中城伊集村に行ちゅん
ああ うなざらの前(メー)や 唯一人(タダヒチュイ)やあみそうらん 矢蔵の側(スバ)に 居(ウ)りよ居(ウ)りよんでぃ云ちゃぐと
「玉や砕けてん 光ある習い 竹(ダキ)や焼(ヤキ)てん節(フシ)や失はん 女身(イナグミ)よやてん 義理(ジリ) 失なゆみ
片時(カタトチ)ん急(イス)じ殺(クル)し殺(クル)し」んでぃ云ちゃりば
うなざらや目眉黒々(ミマユクルグル)と くぅしゅうらーしぃ 容姿(カーギ)やりば 矢蔵やちゃんと打ちふりて
虎千代が命助(タシ)けやい呉(クィ)らば 頼(タ)んで我願(ワンニゲ)になりて呉(クィ)りんで言ちゃん
うなざらや御思子(ウミングヮ)の為(タミ)ともて 虎千代の命御助(ウタシ)けのありば
義理(ジリ)ぬ道まぎて御言葉(ウクトゥバ)になりゆんで御返答(グヒントー)みそうちゃりば 矢蔵の馬鹿男(イキガ)や
うっさふくらさ ああ したいしたい「神の御助(ウタシ)きか今日(キユ)のふくらしゃや
天(ティン)の白雲(シラクム)に登(ヌブ)る心地(ククチ)」んで 笑いしいしいすん うなじやらや
産子(ナシグヮ)の為(タミ)と思て 御言葉(ウクトゥバ)やなりみそうちん 御肝(ウチム)やねーみそうらん
しじまとう みそうらんでぃぬ持病の ぬーぬーんりち 色々口廻(イルイルクチマー)ちゃりば
矢蔵の馬鹿男(イキガ)や ほんのんでぃ思(ウム)て医者の医者数頼(カジタヌ)で 薬の段々上(ア)ぎゆんりさん
だあじんとうの 御病気(ウビョウチ)やあいみそうらんしにちいてや 薬の印(シルシ)や すっとぅんねーらん
らんらんの様(クトゥ)に御(ウ)なみそうち 色々ふり物(ムヌ)言いしち 頭(チブル)みだりて舞(モウ)やーていやーしみそうちゃりば
矢蔵や明けてん暮りてん酒と色好(イルクヌ)で
ああ 無情(ンジョー)さや 産子(ナシグヮ)虎千代や金武寺(チンディラ)にやらち 虎(トゥラ)にちばささったしといぬむん
やがてぬぎしまて打ちけーさりらどーんでぃ思(ウム)れ 我(ワッ)たーがん 胸冷(ンニヒジュ)るさるやる
はいはい とぅっちきんねーらん こひな大道(ウフミチ)居て うかとむぬ云ち かんのーな御使(ウチケー)い
油断しやしまん 急(イス)が急(イス)が
はいはい 云る内する内 伊集村ん走(ハ)いちゃい 御使(ウチケー)いの次第(シデー) 内に行じ 御(ウ)んぬきら
 
〈乙樽登場〉
【歌】[散山節]
 夢や見ちうづり やしまらんあてる
 真夜中に一人 忍で行ちゆる
乙樽
哀り知りみそり今(ナマ)出(ンジ)る我身(ワミ)や 棚原(タナバル)の按司の側居(スバウ)たる女(イナグ)
玉黄金産子金武寺(タマクガニナシグヮチンティラ)にやらち 見ぶさうらちらさ我んとめて来(チ)ゅんで 道ゆ踏み迷(マユ)て山盗(ヤマヌスル)人いちゃて 殺(クル)ちゃんてやり夢(ィミ)や見(ン)ちうづり 我肝(ワチム)ちいぢいと あわて様出(サマン)じて 真夜中(マユナカ)ぬ星(フシ)ぬちゅら道ゆ頼(タユ)て 知らん山路(ヤマミチ)に とめて行ちゅん
 
 

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